日曜日, 10月 08, 2006

村上春樹について(1)

先週の前半に、最近文庫化されたばかりの、村上春樹「アフターダーク」を読んだ。文庫で300ページほどなので、あまり長くない小説だけれど、とてもいい作品だったと思う。

実は、ぼくは村上春樹のファンである。彼の作品をはじめて読んだのは、40歳になったばかりのころ。「中国行きのスロウボート」という短編集を本屋で何気なく買い求めたのがきっかけだったと記憶している。

同じ時代に同じ年齢で通過して、見てきた風景や情況を共有できる満足感のようなものが、ぼくを引き付けたのだと思う。

そのころ「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」「ノルウェイの森」「ダンスダンスダンス」などの一連の羊ものなどが、既に出版されていた。そのあと出版された「ねじまき鳥クロニクル」「スプートニクの恋人」「海辺のカフカ」。それらを片っ端から買って読んだ。ほとんどの作品をとても気に入っている。
ただ、最も話題になった「ノルウェイの森」は少し違和感を持っているというか、あまり好きになれない。
この作品の少し前に「蛍」という短編が発表されていて、村上春樹の短編の中でも一番好きな作品のひとつなのだけれど、それが「ノルウェイの森」の最初にすっぽりそのままはめられているのである。ぼくとしては「蛍」はあれで完結してほしかった。「蛍」に続編があるのが気に入らないばかりか、あとの展開の仕方もどうもよくない。

というようなわけで、ぼくとしては非常に珍しいことなのだけれど。今年に入って、村上春樹の文庫化された長編を、新本、古本かまわず買ったりもらったりして、ぽつぽつと読みなおしている。

その村上春樹がノーベル文学賞にノミネートされているらしい。最有力であると、もっぱらマスコミの「噂」である。

ファンとしては、この「噂」はうれしい。外れたりしたらきっとガッカリするだろう。しかしその一方で「当選」したらと思うと、それはそれで面白くないという気持ちがどこかにある。

それと彼の作品ってノーベル文学賞とあまりそぐわないように思う

どうなれば気持ちの治まりどころがいいのだろうか?「当選」したうえで、かつてのサルトルのように「作家に賞は要らない」なんて、受賞を辞退するというのはどだろうか。これがいちばんカッコいいと思うのだが。

などと勝手なことを、ぼくは思っている。

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